名古屋地方裁判所 昭和36年(ワ)1266号 判決
原告 伊藤藤一
原告 伊藤ひさへ
被告 株式会社富士交通
右代表者代表取締役 中島周二
右訴訟代理人弁護士 永井正恒
主文
原告等の請求はいずれも棄却する。
訴訟費用は、原告等の負担とする。
事実
≪省略≫
理由
原告等主張の請求原因一、の事実及び原告伊藤藤一がカスミタクシー株式会社の代表取締役であつたこと原告伊藤ひさへが同じくその取締役であつたことは当事者間に争いがない。原告等は昭和三十年一月に原告等と被告会社との間の契約により使用人としての給料を受けることが決つた旨主張するが、当時原告等はいずれも取締役であつたのであるから仮にそのような契約がなされたとしても被告会社に対し取締役としての報酬でなく使用人としての給料の支給を受ける契約をするのは商法第二百六十五条にいわゆる取締役会の承認を要する取引にあたると解されるところ、右取締役会の承認のなかつたことは原告等の明らかに争わないところであるから、右契約は取締役会の承認を欠く無効なもので、被告に対する給料の請求は許されないものといわざるをえない。従つてその余の点の判断をするまでもなく原告等の本訴請求は失当として棄却すべきである。そこで民訴第八十九条を適用の上、主文のとおり判決する。
(裁判官 丸山武夫)